先にHDR写真の仕上げとして、何枚かの条件の違う写真を作ってそれぞれを重ねあわせリミックスする方法を書いたが実際にどのような形になるのかサンプルを作ってみた。今回はわかりやすくするために極端な色調に仕上げています。

1.未調整の書き出しJPEG

normal

手前のほうがちょっと暗いですね。まず、明るさやコントラストである程度処理して基本のデータを作ります。

2.HDR処理した基本データ

base

 まだ手前は暗いですね。ここで、HDR処理で極端なデータを作ります。

3.強めに処理したデータ

high

当然、やり過ぎですね。でも手前の石の方は結構いい感じです。そこでこの3枚をPhotoshop上のレイヤーに重ねます。

4.レイヤーによる合成と調整。

gousei

3枚の写真をレイヤー上に配置して、マスクをかけ不要な部分をマスクで隠します。また、それぞれのレイヤーに色調調整などを行い最終的なデータを仕上げます。

5.最終的なデータ。

final

 

概ね。このような手順となります。これによって、各画像の部分に関しての調整が細かく出来る上に、マスクを使っていることで、いつでも元に戻すようなことも可能です。

 

 1.何でもかんでもHDR加工すればいいってもんじゃない。

HDR加工の場合対象物において明暗差がそれほどない場合にはノイズなどの問題やシャープネスに悪影響が出る場合があるので要注意。

やっぱり基本は明暗差が2絞り程度あるような場合に有効。

 2.RAWから作るかJPEGから作るか?

これもまた何でもRAWが最高というわけではない。というのも、ノイズやレンズの歪みの補正はメーカーが用意している方が適正である場合が多く、Lightroomでの加工よりカメラ内のJPEG画像のほうが適度に修正されてい可能性もある。

 3.低照度におけるHDRにも注意が必要。

低照度によるセンサーノイズなどはHDR処理にて強調される傾向があるため、カメラによって使える範囲が限定してくる。

 4.露光差について

自然の光を重要視するらな+-1絞り程度の露光範囲でも構わないが、印象の強い画像にしたいなら+-2まで必要。このため、ここぞという場面では、-2 -1 0 +1 +2 の5枚を撮影する。勿論JPEG RAW両方必要。

 5.全ての画像エリアをHDRで処理することの危険性。

空の雲などは強調の効果をかけ過ぎるとトーンが圧縮され潰れ気味になり、のっぺりした印象になってしまう。そういった事を考えるとその効果に強弱をつけ、何枚かの処理画像を制作してレイヤー上に再配置し、不要な部分をマスクして消していく等の作業も必要となる。

 手順としては以下の方法
  1. まずできるだけ自然な雰囲気にHDR合成を行い、トーンが失われていない事を確認した上で一旦JPEGに書き出す。
  2. 次にベースとなる調整した画像を作成し書き出す。
  3. 強調したい部分に特化して加工を行い書き出す。
  4. これら3枚をPhotoshop上で読み込み、レイヤー上に配置それぞれマスクをかけ、必要な部分のマスクを調整して最終のデータを制作する。

柔らかい明るい感じで写真を仕上げたい場合、通常露光で撮影したも写真から加工する場合があります。

最初から露出オーバーで撮影するという考え方もありますが、それでは残念ながら、撮影時に明るい部分が露出オーバーとなって、階調自体が無くなってしまう可能性が出てきます。

ですから、元写真はできるだけ階調を残すほうが後処理では有利です。

明るめの写真を作りたい場合は、HDR等で、階調自体を先に確保して、その後加工したほうが良い場合も出てくるでしょう。

1.通常の明るさの写真

deltaworks-1030421

2.露出設定のみで明るくした場合

025

実際の写真はこちら

deltaworks-1030421-4

 

露出だけの変更だと、明るいところ(桜の花びらなど)の階調が失われています。そこで、露光量のパラメータは触らずトーンカーブで調整します。

3.トーンカーブで調整したもの

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実際の出力サンプル

deltaworks-1030421-2

上記のように、ハイライト部分を一旦抑えて、全体を少し明るくします。この時点で加工の方向性が確定されます。

4.最終調整

ここまで出来たら、後は全体のニュアンスを考えながら色合いや細かい調整を行います。下記写真では、全体の明るさの再調整と彩度のアップ及び、花びらの部分に単独スポット修正を施し、シャープネスをなどをアップしました。

deltaworks-1030421-5

 

 

 

スマートホンアプリによってもHDR画像が簡単に作れるようになりました。その上、デジカメよりも簡単で効果が高い場合もあります。勿論、シビアな画質は望めませんが、それにしても印象的なHDR画像を簡単に作ることができるので、私も良く使っています。

iPhoneのカメラにもHDRの機能は入っていますが、基本的にはとてもお上品な設定になっていて、効いてるのか効いていないのか分かりにくいかも知れません。HDRの本来の機能としてはiPhoneのシステムは正しい訳ですがやはり物足りない。

そういった部分はアプリでやればいいわけですが、私が主に使っているのは

Pro HDR

というソフトです。これにはAndroid版もあります。アプリの説明はリンク先を参考にして頂ければよろしいかと思いますが、こちらからもご確認できます。

このタイプのアプリでは撮影前に事前に露出算出が行われ、状況に合わせた明暗の写真が2枚撮影されます。このために明暗の差が大きな場合は2枚の写真の露出も大きく異なります。

以下は自動で取り込んだ場合のアンダー側の画像です。

IMG 1270

次がオーバー側の画像

IMG 1271

これを加工した結果が下記

IMG 1272

合成の際にはコントラストや彩度なども変更出来ますので手軽にこんな画像が作れます。

有料ソフトですが、とても優秀なアプリですので皆さんも一度試してくださいね。

 

HDR写真は基本的にRAWデータから作るのであるが、その理由としては、JPEGデータが色数を減らすことによって圧縮されている為、HDR写真の様に、失われたトーン(階調)と色調を取り戻すという目的には適していない。

では、実際どのくらい違うのかを実験してみた。

まずは撮影データを列記する。

  • 使用したカメラ:Panasonic GH2 LENZ Panasonic 14mm F2.5
  • 露出:カメラのオートブラケット機能を使用し、中央重点のオートからプラスマイナス -2.-1.0+1.+2 にて撮影、同時にJPEG及びRAWで記録
  • 使用ソフト:Photshop CC
  • HDR処理:Photoshop HDR Pro 16bit プリセット=フラット ゴースト処理なし

1.通常の適正JPEG

 1020577

 

2.JPEGからのHDR処理

jpeg-HDR

3.RAWからのHDR処理

raw-HDR

 

同じデータからの比較であるが、色調も含めて、ずいぶん違う感じになっている。JPEGからのHDRのほうが全体的に明るくなっているのは、カメラ側での補正が効いているからであって、見た目はRAWからのHDRよりもバランスがいい。

実際の作業の場合は、RAWをHDRにする際に更に細かくパラメーターをいじるため、この結果を持って、JPEGのほうがいいとは言えないだろう。しかし、フルオートの場合はこのようになるというサンプルだ。

上記のHDRはできるだけフラットな形での処理であるから、そこからどんな絵にしたいのかで適正は変わってくる。

特に、低照度の撮影の場合、複数の写真からHDRにした時よりも、単体のRAWから擬似的HDRにしたほうがノイズが少なくなる場合もあって、必ずしも複数枚のHDRが優れているとは言えないかも知れない。

この場合のノイズとは概ねセンサーノイズであって、それによる色ムラが増える場合があり、この点は意外だった。

また、同様に、低照度のノイズは、Lightroom等で補完するよりもカメラ本体の持つJPEG時のノイズリダクションが優秀である可能性があることも付け加えておきたい。

これは、カメラ独自の特性を前提に組まれているノイズリダクションがLightroomの汎用的なノイズリダクションがよりもより適しているということに原因がある。

それは、勿論カメラのシステムの出来不出来に大いに影響されるため事前のテストが必要だろう。

このような事を前提に撮影を行うとすれば、やはりJPEG、RAW両方での撮影が必須となるだろう。